出張サンタ、と言いました。

「出張サンタ」 今回、役員は『出張サンタ』を統一のレポート課題とした。
まずはその発端となった「彼」と知り合えたことと
「彼」の問題提起に素直に感謝したい。
「彼」は市内に住む青年である。様々なことに興味を持ち、
自分の住む町をもっと良くしよう、という気持ちも人一倍強い。
各種団体の会員になり会合に顔を出し積極的に発言も出来る。
そして、子どもたちにスポーツも指導しているという人物である。
そして「彼」は広報に載る『出張サンタの依頼募集』の記事が
数年前から気になっていたそうである。
そんな「彼」がひょんなことから今回の『出張サンタ』に
1日だけ参加出来ることになった。
1日だけの参加であったが、持ち前のバイタリティーで
とても素敵なサンタクロースとなった。
その後、『出張サンタ』最終日にその日のメンバーでお疲れ会を行っていると、
偶然その店にあとから入ってきた「彼」と出会い、
その時「彼」から『出張サンタ』についてある問題提起が率直になされた。

「彼」からの問題提起は
【現在のやり方では訪問先に余分な人間(運転やプレゼントの受け取り、
連絡の係以外)もついていっているから、無駄が多い。
1チームを3人にしてサンタを増やすことで効率を上げ、
訪問件数をもっと増やしてはどうか。
こんなによい企画はもっとたくさんの人に知ってもらうべきだし、
そうすればたくさんの子ども達によい思い出を与えることが出来るのに。
5,6チーム作れば100件以上の家庭を訪問することも可能だ。】
と言うものであった。
一理ある。
今年も無事に済んだという安堵感から気が弛んでいたためか、
思わぬ提起に一同はしばらく押し黙ってしまった。
そのときにその場にいた人間で出した「彼」への回答は、
【人員不足もあり3日間を通して15人程度のスタッフを集めるのは
(クリスマス前後でもあるからよほど暇な連中でないと)難しいであろう、
また訪問先の割り振りや事前の連絡調整なども大がかりになってしまい
大変なことだ。】という、いたって事務的なものになってしまった。
しかし、その時の「彼」の言葉に皆の中にいろいろな想いが渦巻いたのだろう、
その後の打ち上げは言葉少ない静かなものになった。

「彼」の考えにも確かに一理あるのだ。
当然、地元に住む子どもたちや青年団の知名度アップを思っての発言である。
しかし、「彼」の提案にも、そしてその場の皆の答えにも
「『青年団』の回答としては何か違うのではないか…」
という思いでしっくりとこないままその夜は帰路についたが、
布団に入ってからもやはりそのことが頭に残っていた。
何がしっくりこなかったのか。なぜ「違うのではないか」と感じたのか。
「彼」の言う『出張サンタ』、それでは『出張サンタ』は
ある種の、業務的で大掛かりなイベントになってしまうのではないか、と考えた。
行なっている当人たちを含め、一度動き出したイベントを止める(辞める)
のはとても難しい。そして後輩たちの青年団活動の負担になるような
(強制的にでも行なわなくてはならないような)イベントにはしたくない。
自分たちが楽しんで行う活動でなければそれは
ただの苦痛になってしまう。
作業になってしまう。
青年団活動になりえない。
…と、感じたからではないだろうか。

それは、今まで自分たちが行ってきた行事への取り組み方、
団員との関わり方に要因があるのだと思う。
「役員だけの青年団」にしてはいけないという想いがそこにはある。
組織であるから統括する者も必要ではあろうが、
「みんなで考え、みんなで行なう」
…これが本当に理想的な青年団活動ではないかと思う。
ただし、「みんなで行う」というのは、
みんなが一斉に同じことをするという意味なのではない。
職業や年齢、性別を超え、様々な人間が集まる青年団であるからこそ、
自分の出来ることを、出来る時に出来る場所で、素直な気持ちで表せる、
そしてそんなお互いを認めあえるという意味なのではないか、と自分は思う。
例えば、行事当日に参加できなくても準備には顔を出したり、
代わりに参加できそうな人に声を掛けたり、
ちょっとした差し入れを持ち寄ったり…、
自分たちはそんな雰囲気があるお陰で、
青年団活動を通じて今までにない自分を見つけ出してこられたし、
それを表に出すことが出来た。
その嬉しさと自信を糧にまた新しい可能性を
自分のなかから掘り起こそうとしてきた。
だから、自分たちの行なえる『出張サンタ』とは、
やっぱり、狭い車の中で若いのも年寄りも、
男も女もぎゅうぎゅうに詰め込まれながら、
依頼先の家庭に交代で電話を掛け合い、プレゼントを受け取りに行くことで、
お互いの意外な一面を見つけたり、参考にしたり、注意しあったり、
もちろん大笑いしたり…、ではないかなぁと思う。
毎年30件前後という依頼件数が多いか少ないか、
は個人により思うところは様々ではあろうが、
そういった活動のなかで地域とのつながりや仲間とのつながりを
感じる手段にしたいと思う。
そして自分たちの青年団はそういうことの出来る場でありたいと思う。

ただ、自分たち年長者(団歴の長い者)の考えていかなければいけないことは、
「彼」の意見を単に批判したり否定したりするのではなく
、 「彼」なりの今回感じた『出張サンタ』への想いを
まずはどのように汲み取るか、そしてその想いを自分たちも、
「彼」も、どんな風に今後の活動に活かしていくか、
活かしてもらうかということではないかと思う。
今回の出来事を通じて、行事のあり方やそもそもの青年団活動について
いろいろと考えることになった。
そして、そういったことが役員に課せられた宿題のように思われる。
 


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